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タッチ・ザ・ハート通信

Vol.30号 2018.8

N看護師さんのこと

                       

藤村 逸枝 (京都介護・福祉サービス第三者評価・外部評価調査員) 

以前、私が勤務していた社会福祉法人A施設のN看護師さんのお話です。 施設で年に何度か発行されていた機関誌に素敵な文章が載っていました。後でその文章は施設のN看護師さんの寄稿と知りました。内容は施設に長く入居されていた方の死を悼むものでしたが、その筆致はまさに素人の域を超えていました。海辺の貧しい漁村から都会に移り住み、その後、様々な変遷を経て、最後をその施設で迎えられた利用者さんの生涯を見つめ、その方への別れのことばを実に情緒的で思いやりに満ちた文章で綴っておられました。当時の施設にはNさんの様な優しい看護師さんがたくさん勤務されていて、私の中でナイチンゲールのような看護師像が出来上がっていました。その後、その施設を離れた私はさまざまな人との出会いの中で、あの施設の看護師さんたちは稀有な存在だったのだと厳しい現実を知ることになりました。N看護師さん以外にも自家製野菜の漬物をリュックに負い朝の満員電車に乗り込み、手作りの味を職員食に添えてくれた看護師さん(同じ電車に乗り合わせた人はさぞかし漬物の臭気に閉口したのではと想像しつつも、その優しさは私たちの胃に染みました)や、九州の個人病院で働いていたけれど老後を考え娘さんいる京都に出て来られた田舎情緒たっぷりの九州弁の看護師さん等がおられました。どの看護師さんも、ほのぼのとした癒しのパワーを持った方たちで、医療知識の乏しい新米ケアマネの私には大きな味方でした。当然のことながら当時の施設の職員離職率は非常に低かったと記憶しています。昨今、介護保険の縛りが徐々に強くなる中で多くの職員が減算を恐れるあまり書類作りに追われ、利用者さんに余裕を持って接することが少なくなっている様に思います。更に追い打ちをかけるように、私たちも訪問調査に伺った先で「どんなに良い介護をしていてもその記録がなければ客観的にわかりませんよね」などと小賢しいことを言ってしまいがちです。施設の行事一つとっても、何か企画しなければ、企画したことを実践し、記録に残さなければといった焦りや義務感のようなものが先行しているように伺えます。「今日は天気が良いから外に出たい」とか「回転寿司が食べたいな」といった暮らしの中でのあたりまえの思いや願いをすぐに実行に移せないもどかしさが伝わってきます。看護や介護は何かと緊張する場面が多いのですが、常に理性とユーモアと愛情を持って業務に携わっておられたN看護師さんの下記の「短歌」に込められたまなざしが、今現場で頑張っておられる皆様やご家族の一服の清涼剤となれば幸いです。
・東京銀座「クラブ峠」のママたりしNさんホームにひっそりと逝く
・「死にたい」が口癖のTさん声あげて食後の薬はまだかと急がす
・「蒐集癖あり」と記されてTさんの宝の箱にある聴診器

参考書籍:中尾町子歌集   『喜びとせむ』   京都カルチャー出版

Vol.29号 2018.7

私の福祉との出会いⅠ  

NPO法人とらい・あんぐる
副理事長  中尾浩康

 私が福祉の世界に飛び込んだのは、40歳になる頃です。それまでは、海外勤 務を含めた製造業の財務・経理マンで仕事人間でした。達成感はあるけど、何か を欠いた日々。そんな時、阪神淡路大震災に遭いました。家族もろとも箪笥の下 敷きになり、かろうじて生き残りました。暗闇の中で、幼い息子の泣き声が生き ている証に聞こえ、生命あることのありがたさを痛感しました。そんな時期、父 親ががんで他界しました。認知症が出て、介護、看護が重くのしかかる中で、母 親は主治医の冷たさに泣きました。そんな日々の中で、一片の新聞の求人広告が きっかけで私の人生は急転回したのです。

神戸の特養の事務職員募集でしたが、手を挙げて現場実習を希望しました。する と、いきなり特養のデイルームに放り出されて、利用者さんの話し相手を命じられ たのです。ずらりと並んだ車イスの輪の中で呆然としている私を救ってくれたのは、 傍らにおられた車イスのおばあちゃんでした。「兄ちゃん、見ん顔やな?事務の人 か?」から会話が始まり、何をするねん? 話し相手せなあかんねん、そら、困っ たな、という流れでしたが、おばあちゃんは、あっと言う間に何人かの車イスの利 用者さんを集めてくれて、話の輪が拡がりました。

 人の優しさに疑問を感じ、父親を見捨てるように対応した医師への不信感など、 いささか人間不信の中で、このおばあちゃんの無心の親切がほのぼのと温かく、こ んな世界があったんやという新鮮な驚きと感動がその後の私を支えました。希望し た現場実習でしたが、寝たきりで失語症のおばあちゃんは、へたくそな素人のオム ツ交換にも嫌な顔をせず、冷とうてごめんなを繰り返す私に、優しく笑顔をくださ いました。気持ちを込めたサービスに心からの笑顔と感謝が返ってくるこの福祉の 現場というのは、なんて素晴らしいんだろうという感動の記憶が、今日まで23年 間私を福祉にのめりこませてきました。

 デイサービスの実習の時、最初に与えられた仕事は、重度の認知症の利用者さん の付き添いでした。認知症の方は、何もわからないと教えられていました。彼は、 あちこち現場を巡回して、いろいろな指示を出しながら、納得したり、首を傾げた りと、その姿は立派な現場のエンジニアでした。私には意味不明の言葉でしたが、 歩きながら私に少し身体が当たったりしたときには、それは丁寧に詫びられるので す。人間としての大切なもの、人間同士の敬意、私が忘れていたものをこの利用者 さんは思い出させてくださったのです。心ない介護者はこのような行動を「徘徊」 と呼び、私はその言葉が嫌いです。この利用者さんの持つ尊厳に触れようとしな い、介護者からのコミュニケーションの断絶を感じるからです。  この利用者さんには、その後、体調を崩されて入院し、容体は悪化して家族が 呼ばれるような事態になりました。病室では、奥様が寝台車の手配をするという その中に、利用者さんの通うデイサービスの主任が駆けつけてきて、病床のこの 利用者さんに「◯◯さん、また園のデイに来なあかんやろ」と大きな声で声かけ をした瞬間、「はあい」と言いながら、息を吹き返されたという嘘のようなエピ ソードがあります。

 人間の生命とその尊厳は、誰にも侵されないものです。しかし、私は今の介護 現場の荒廃が、この最も大切なものを失わせてるように思えてなりません。

本の紹介
中尾浩康 著
「介護の仕事は聴く技術が9割」  ぱる出版から29年12月に刊行されました。

 

この「タッチ・ザ・ハート通信」は、私ども京都府認知症グループホーム協議会会員様を中心に、京都府下の会員以外の施設・事業所様など、認知症高齢者と触れ合う機会が多いと思われる所へも送っています。
本通信では様々なケースを取り上げていますが、皆様方の事業所で既に実施している、参考になる“認知症実践ケア”がありましたら、下記様式で簡単に情報提供いただければ、広く京都府下の認知症高齢者と触れ合う機会が多い施設や事業所へ、皆様の事業所名を入れ案内しようと思います。 主旨に賛同いただけましたら、奮って情報の提供をお願いします。

 

Vol.28号 2017.12

研修会の報告  

秋の紅葉が終わると同時に、朝晩は凍てつく様になり、既に府下の北部地域からは雪の便りが届きました。市内も今すぐの感じです。寒くなりますと、事業所内でも、入浴対策が必要であったり、大変ご苦労される事も多いと思います。様々な工夫での寒さ対策が必要となってきます。

さて、 タッチ・ザ・ハート通信で既に皆様にご案内しております「出前研修」。 今回は、『暮らしの中のリハビリテーション』というタイトルで、パナソニックエイジフリー株式会社の理理学療法士、竹内 真 様に、“グループホーム醍醐の家ほっこり”にて出前研修を実施してもらいました。生活リハビリの留意点として、高齢者一人ひとりの特性と、加齢に伴う心身機能の変化を、アセスメントで見極める事の大切さを教えていただきました。

集合研修としましては、シンポジウム形式で、同志社大学 社会福祉学部 教授 空閑浩人先生に、『地域で生きる 地域で暮らすグループホーム』というタイトルで講義をしていただきました。シンポジスト役のグループホーム醍醐の家ほっこりの坂田周平様進行のもと、グループホームみやまの斎藤友泰様、グループホームぬくもりの里の鳥羽幸代様、グループホーム醍醐の家ほっこりの岩田宜子様からの実践報告もありました。生活者としての高齢者への係わり方や支え方、また、グループホームの存在価値を自らに問い、地域を巻き込むのではなく、地域に巻き込まれる存在になることの必要性を教えていただきました。

以上、出前研修と集合研修の報告を兼ねまして、今回の通信に代えさせていただきます。

出前研修

『暮らしの中のリハビリテーション』

日時: 平成29年9月9日(土曜日) 13時30分~15時30分
場所: グループホーム醍醐の家ほっこり 
講師: パナソニックエイジ―フリー株式会社 理学療法士 武内真 様

地域のグループホーム、小規模多機能の事業所、グループホーム醍醐の家ほっこり・法人の職員方々、総勢15名が参加しました。武内真先生から、理論と実際(体験)を教えていただきました。私たちは、日々、共に暮らしを営む中で、ご利用者のADLの維持、QOLの向上を目指した働きかけを試行錯誤で行っています。今回の研修では、「暮らしの中のリハビリ」のあり方について、リハビリテーション専門家(理学療法士)のアセスメント視点で行うことの大切さを学びました。 暮らしの中のリハビリテーション「生活リハビリ」の留意点は、高齢者一人ひとりの特性と加齢に伴う身心機能の変化を、アセスメントで見極めることが大切であることが理解出来ました。「体験学習が良かった」「今後も引き続き生活リハビリに関する研修を行ってほしい」等の感想や要望が寄せられました。

空閑先生は講演の中で、社会的な課題はミクロからマクロに、多角的な視野で捉えること、例えば、グループホームが『地域を巻き込むのではなく、逆に『地域に巻き込まれる』存在になることを強調されました。対人援助の専門職である私たちは、生活者としての高齢者に、どのように関わり、支えたら良いかを深く考えさせられました。また、グループホームの存在価値を自らに問い、支援のあり方を再考する必要性に気づかされました。3か所のグループホームの実践報告では、各事業所が画像や資料を使って、地域性を活かし、地域との関係性を大切にして取り組まれたケアの実際を伝えて頂きました。また、実践の中で、グループホームの役割を再認識したことや、これからの抱負等も語って頂きました。 今回の研修で、私たちは、改めて、地域で生きる・地域で暮らす、一人一人が主役となれるグループホームづくりに励みたいと思いました。参加された職員さんからは、「有意義な研修でした」「実践報告から沢山の地域連携のヒントをもらいました」「この様な研修を続けてほしい」「先生のお話に胸が熱くなった」「意見交流の時間が欲しかった」等のご感想・ご意見を頂きました。研修会には、認知症の人と家族の会、第三者評価機関、非会員のグループホーム様他、広く関係機関や団体様にご参加頂きました。今回の学びがグループホームに留まらず、 広く地域に広がっていくことを願っています。

 

この「タッチ・ザ・ハート通信」は、私ども京都府認知症グループホーム協議会会員様を中心に、京都府下の会員以外の施設・事業所様など、認知症高齢者と触れ合う機会が多いと思われる所へも送っています。
本通信では様々なケースを取り上げていますが、皆様方の事業所で既に実施している、参考になる“認知症実践ケア”がありましたら、下記様式で簡単に情報提供いただければ、広く京都府下の認知症高齢者と触れ合う機会が多い施設や事業所へ、皆様の事業所名を入れ案内しようと思います。 主旨に賛同いただけましたら、奮って情報の提供をお願いします。

 

Vol.27号 2017.10

認知症実践ケア

社会福祉法人福知山シルバー 認知症通所介護施設 土ニコニコハウスりんご村
赤穂亜矢子様からの情報提供

 

タッチ・ザ・ハート通信で案内しております「皆様の事業所にて実施している認知症実践ケア」の呼びかけをしましたところ、今回は、認知症通所介護施設「土ニコニコハウスりんご村」の赤穂亜矢子様より、情報提供がありましたので、ご報告させていただきます。

 

実践している ケアの内容や取り組み
 

「一人の職員が寄り添うこ とで、デイが利用できるようになった例」

Aさん86歳女性・介護度3 Aさんは杖歩行ができるが、ほぼ一日中横になっておられるため、閉じこもり(引きこもり)状態になられ他者との関わりが稀有になってしまった。 認知症症状により、感情の起伏が非常に激しく家族も困っていた。 Aさんは、まず週1回のデイサービスから始めることになりましたが、はじめは来所拒否が強く、お迎え時30分程話し込んでからやっと来所してくれる状態でした。 途中、送り出しヘルパーも入れてもらいましたが、余計に混乱し、しばらく休まれることになったので、デイの迎えの職員を固定化し、同じ職員が同じ声かけで誘うことにしました。 又、家族が声をかけるとこじれるので、職員に任せてもらう様、ご家族に協力をお願いしました。

効果が表れている点

① 職員が迎えに行くと、Aさんは次第に笑顔で迎えてくれるようになった。
② デイの回数も増え、半年後には週2回、1年たった今は週3回の利用になった。
③ 入浴にも応じられるようになった。  入浴も出来るだけ同じ職員が介助するようにして いますが、強い拒否がある時には、無理をせず中止している。
④ 他者ともコミュニケーションが取れるようになり、ゲームやカルタにも参加している。
⑤ 感情の起伏が緩やかになり、ご家族への対応も日に日に改善してきている。

介護サービスの利用を頑なまでに拒まれていたAさんが、1人の職員が、焦らず・あきらめず寄り添い続けてきた結果、様々な生活場面で穏やかさと活気を取り戻され、サービスを抵抗なく受け入れられる様になられた事例です。
「認知症実践ケア」として今回報告させていただきます。

 

この「タッチ・ザ・ハート通信」は、私ども京都府認知症グループホーム協議会会員様を中心に、京都府下の会員以外の施設・事業所様など、認知症高齢者と触れ合う機会が多いと思われる所へも送っています。
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Vol.26号 2017.09

出前研修(講座)報告「看取りを語る~生きることを支えるケア~」

不快指数100%を超える様な湿気の多い日が続く8月が終わり、9月に入った途端に、湿気が去り、特に朝夕は過ごし易くなった事と思います。皆様の事業所では如何しょうか。 さて、既に皆様にはご案内しておりますが、当グループホーム協議会の会員サービスの一環として、昨年より、研修会に参加しずらい事業所の皆様の為に、皆様のご要望に応じ皆様の事業所に講師を派遣し、皆様の事業所で研修を行う“出前研修(講座)”を実施しています。 既に数回実施しておりますが、先月に実施しました“看取りに関する研修(講座)”は、各事業所においても関心の高いテーマであり、今回本通信を通じ、研修の報告を致します。

研修名(出前研修) 看取りを語る~生きることを支えるケア~
日 時 平成29年8月4日
場 所 グループホーム醍醐の家ほっこり
講師 林 恵美 (看護師)
社会福祉法人あじろぎ会 宇治病院
医療・福祉・介護支援連携室
参加者 18名
事業所の感想 醍醐の家ほっこり事業所長 上田充子
講師の感想 林 恵美 看護師

<事業所の感想> 醍醐の家ほっこり事業所長 上田充子

在宅で7~8年、訪問看護の経験を持つ林恵美様から、人生の終焉期を迎えられたご本人に、私たちはご家族等とともにどのように寄り添っていけば良いのか、関係機関との連携も含めた人間味豊かなお話をお聞きいたしました。醍醐の家ほっこりの職員に加え地域の介護・福祉サービス事業所や地域包括支援センターの職員さん達、総勢18名が参加された実のある出前研修でした。林さんは、この研修の直前に「NHKプロフェッショナル」ご出演の川越 厚医師から、今回の研修受講者(介護現場の職員)に向けて、看取りケアの最後のステージで『これからが介護スタッフの出番です』と言う言葉をいただき、伝えられた参加者は大変勇気づけられました。  

趣味活動

 

<講師の感想>   林 恵美 看護師 研修を終えて ~ともに学ぶことの大切さ~

8月4日(金)多くの仲間と「看取り」研修で学びを共有でき嬉しく思っています。
今回のテーマである「看取り」は内容として奥が深く、広く、濃いものであり、この研修で「話し切った」、「理解できた」と言えるものではありません。参加してくださった皆さんを見ていて、自分自身、今後も学び続けていこうと思った研修でした。
人の「生と死」の過程は自宅で家族が立ち会った昔とは違い、今は約8割の方が病院で死を迎え、「死」はテレビドラマでなどで目にするなど、私たちの実生活からは遠い出来事になっています。私も小学生の頃に刑事ドラマだったか、人が「死ぬ」場面を見ていた時、母が「こんな簡単に死なはらへんよ。」と言っていたのを思い出しました。母が若い頃、「結核」が日本の死因の第一位を占めていた時代に思春期真っ只中の母は自宅で母親と一緒に叔母を看取ったそうです。結核の終末期は壮絶でその頃は痛みや苦しみをコントロールする医療も十分ではなかった時代、母は叔母の壮絶な「死」を看取ったという体験を話してくれました。  いつしか「死」は怖いもの、聞きたくない、見たくない、ましてや自分が「死ぬ」なんて想像もできないと自らも「死」に向き合えていなかった私がいました。
しかし今は違います。保育士時代は子どもたちがこの世に「生まれ」成長していく姿を見ましたし、看護師になってからは「生と死」に関わり、「死に逝く過程」に寄り添わせていただく時を過ごしています。「こうやって私は生を全うし逝くんだよ」と患者さんが身をもって教えてくださっているように思えてなりません。感謝の気持ちでそっと手を握らせてもらうのです。
 これからは自宅や地域(施設)で「看取り」に寄り添う機会が増えると予測されています。独りで「看取り」に立ち会うのは誰でも不安です。しかし終末期に関わる全ての人(家族、介護職員、ケアマネージャー、医師、看護師、生活相談員、施設長、その他関係職員)が思いをひとつに、互いの業を尊敬し助け合いながら「死に逝く過程」に寄り添うことで心のこもった「看取り」ができると考えています。そしてその体験を共有することにより自らも人として成長していくのではないでしょうか。
川越 厚医師と研修5日前にお会いした時、私たちに「利用者さんにとって皆さんは家族と同じです。介護士さんたちはとても素晴らしい働きをされています。ぜひ連携をとりながら学び合い、高齢者の方に寄り添ってください。」と熱いメッセージをくださいました。とても勇気づけられる言葉です。
最後に、このような機会をいただき皆さんとつながることができたこと、感謝の気持ちでいっぱいです。「仲間がいる」という心強さを感じながらこれからも頑張っていきたいと思います。

 

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Vol.25号 2017.08

認知症実践ケア

社会福祉法人悠仁福祉会 グループホーム鳳凰槇島
管理者 山下様からの報告

 タッチ・ザ・ハート通信の直近2号(Vol.23 Vol.24)で、ご案内しております「皆様の事業所にて実施している認知症実践ケア」の呼びかけをしましたところ、グループホーム鳳凰槇島の管理者 山下様より、情報提供がありましたので、ご報告させていただきます。

認知症実践ケア


プランターで野菜や果物を栽培し、利用者と一緒に食べるまでは、他の事業所でも実施している内容だと思います。
しかし、「栽培した野菜や果物を利用者本人のお姉さんに送り、食べてもらっている」点に関しては、利用者がお姉さん想いである事と、お姉さんが野菜や果物が好物であるという事を、上手に引き出されていると思います。

そして、大きな荷物ではないにせよ、「送る準備、荷造りをする」という行動も必要になり、大好きなお姉さんに野菜や果物を送ってあげられるという、生活の張りにもつながり、利用者自ら笑顔で進んで行っておられる様子が伺えられます。
利用者の心の上手な引き出し方のひとつ(ケア)でもあると思います。

 お花(生け花)に関しては、「お試しで生け花教室に連れて行く」という発想が素晴らしく、利用者の趣味や特技を上手に引き出されていると思います。

 両方とも共通に言えることは、利用者との日常生活の中での会話から、自然に利用者の気持を上手に引き出しておられます。 横文字で訳のわからない“○○○ケア”とかいう、流行りのケアではなく、自然に利用者の「心」をつかみ「素」な気持ちで介護されておられる場面が想像され、利用者の笑顔が施設のあちこちで見受けられそうな感じがします。 共に素晴らしい、「実践ケア」であると思います。

 

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Vol.24号 2017.07

趣味活動

毎日汗ばむ陽気で、寝苦しい日々が続いています。皆様いかがお過ごしでしょうか?

最近、直接に利用者と接する機会はないですが、多くの利用者は、ごく最近の事は忘れがちの様ですが、随分と昔の事や、昔に活躍したご自分の記憶などは良く覚えているとお聞きします。特に趣味とか特技の世界は、より一層ではないでしょうか?

今回は、趣味を通じ達成感を味わうことにより、自信を取り戻し生活意欲を高めるケアに関し、考えてみたいと思います。

趣味活動 趣味活動 趣味活動

 

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Vol.23号 2017.06

徘 徊

梅雨に入り、しばらくは晴天が続きましたが、先週位から本格的な雨となりました。四季のうちで、最も緑が美しい季節で、遠くの山々を見ると、針葉樹林と、落葉樹林のコントラストがはっきりと映っています。

今回のテーマは、「徘徊」に関してです。介護保険制度がスタートし、グループホームも全国あちこちで事業化されはじめた頃は、今回のテーマである「徘徊」に関し、どの事業所でもお悩みになっていたのではないでしょうか?特に、「離設・徘徊」なる文言は、ニュースや新聞等でもさかんに取り上げられ、大きな事故につながったケースがあった記憶もあります。ただし最近はあまり聞かなくなりました。認知症高齢者の徘徊に関するケア方法が確立されて来ていることだと思います。

しかし、新しい利用者を今までとは違う環境の事業所へ迎え入たときの環境変化に伴う利用者の気持ちの変化、そして事業所側スタッフの交代に伴う利用者との関係性の変化も今後ありますので、いま一度今回の「徘徊」に関し考えてみたいと思います。

徘 徊 徘 徊 徘 徊

 

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本通信では様々なケースを取り上げていますが、皆様方の事業所で既に実施している、参考になる“認知症実践ケア”がありましたら、下記様式で簡単に情報提供いただければ、広く京都府下の認知症高齢者と触れ合う機会が多い施設や事業所へ、皆様の事業所名を入れ案内しようと思います。 主旨に賛同いただけましたら、奮って情報の提供をお願いします。

 

Vol.22号 2017.04

洗 濯

梅雨入り前、あっという間に桜の花も散り、まさに新緑の季節となりました。一年の内で最も過ごし易い季節になりました。
この時期は雨も少なく、洗濯物も外干しで良く乾きます。今は全自動洗濯機で乾燥機まで付いていますので、ひと昔前までの、手洗いをして、庭先に洗濯物を干す習慣もほとんど無くなったかも知れません。
しかし、入所されている利用者のほとんどは、皆さん乾燥機付全自動洗濯機世代ではなく、日照を求めては洗濯物を外に干しておられた世代の人たちです。

皆様の事業所で、時間的に余裕のある時、ハンカチやタオルの小物を利用者と一緒に水に触ながら手で洗い、外に干したりしてみては如何でしょうか。利用者とのコミュニケーションが高まり、洗濯を通じ五感を刺激する動作は、「生活型のリハビリテーション」のひとつに結び付くものと思います。 洗 濯 洗 濯

 

Vol.21号 2017.03

昼 夜 逆 転

3月も下旬となり、やっと春めいて参りました。日中の陽射しにも温もりを感じるようになり、非常に過ごし易くなりました。特に今年の冬は、寒さが長かったせいもあり、皆さんもこの「春の温もり」を待ちわびていたのではないでしょうか。

さて、ポカポカと春の温かい陽射しを多く受けるようになると、昼間はだれでもウトウトと眠くなるのが一般的です。ただし、余りに昼寝の時間を多く取りすぎると、夜になかなか眠れないという事にもなってしまいます。
「夜に眠れない」ということは、利用者さんにとっても、ケアを提供する事業所の皆様スタッフにとっても非常に大変です。
皆さんの事業所では如何でしょうか?

今回は、「昼夜逆転」について考えてみたいと思います。

昼 夜 逆 転 昼 夜 逆 転 昼 夜 逆 転

 

Vol.20号 2017.02

炊 事

今年も既に立春が過ぎ、いま少しで周りの木々や花たちが芽吹き始める季節となりました。うっかりしておりまして、先月は2017年度の新年号通信の送付を忘れ、ひと月遅れの通信となってしまいました。

多くの介護施設利用者にとり、日常生活のなかで、食事時間は楽しみのひとつであり、待ちどうしく、そして、嬉しいひとときであると思います。
特養や老健といった大型施設とは違い、グループホーム等の小さな施設では、献立を決めたり、食材の買い出し、そして、炊事に関しても生活リナビリテーションの一環として、スタッフが利用者と協働で行っている事業所も多いと思います。
但し、炊事が好きな人には何ら問題が無いにしても、あまり好きで名はない人にはどうでしょう?

今回は、炊事に関し考えてみたいと思います。

炊 事 炊 事 炊 事

 

Vol.19号 2016.12

居間やリビングでの過ごし方

先月は散歩(外出)に関し皆様と一緒に考えてみました。 早いもので、今月もう師走に入ってからは、曇りの日や雨の日が多くなり、春先までは、なかなか散歩もしづらい季節なのかも知れません。
一般的に、グループホームの居間やリビングは、一般家庭と違いやや広々としています。これからの季節は、居間やリビングでの過ごしかたは、利用者にとりまして大変に重要になってくると思います。  居間やリビングは、利用者の昔の思い出を引き出したり、一緒にテレビを見たり、音楽を聴いたり、様々なケアが生まれる「場」であると思います。

今回は、外出ではなく、居間やリビングでの日頃の過ごしかたについて考えてみたいと思います。

居間やリビングでの過ごし方 居間やリビングでの過ごし方 居間やリビングでの過ごし方

 

Vol.18号 2016.11

散 歩(外出)

朝晩の冷え込みが厳しい季節となりました。そろそろ山間部では雪の便りも聞こえる季節です。今年の京都の紅葉は昨年と比べ、木々の色づきが良いと言われています。 この時期、多くの事業所では、「春のお花見」といっしょで、「秋の紅葉見物」にも、散歩や行事として外出される機会が多いと思います。
色鮮やかな紅葉は、きっと利用者の皆様の心を癒してくれると思います。ライトアップも盛んですが、やはりお日様に照らされた自然の色が良いですね。

 今回は、大がかりな行事としての外出ではなく、日頃の“お散歩”について考えてみたいと思います。

車椅子での利用者も増え、散歩に出かける機会が減ってきているかと思います。季節感を感じたり、地域とのかかわりを楽しむためにも、時間がとれれば、利用者と散歩されてみてはいかがでしょうか。

散 歩(外出) 散 歩(外出) 散 歩(外出)

 

Vol.17号 2016.10

帰宅願望

ここ数年、京都市内や京都府下では急ピッチにグループホームの施設整備が進み、新しく入所される認知症高齢者の数も増えています。 一般的に、事業の規模が増え大きくなると、増えた分だけ様々なリスクも増えるようになると言われます。

今回は、新しく入所される利用者が増えることによるひとつのリスクである、利用者の「帰宅願望」(離設)に関し、考えてみたいと思います。

.... 皆様の事業所でも様々な取り組みがなされていると思いますが、今回のケースは、比較的にグループホームに携わる経験の少ないスタッフには参考になると思います。
皆様の事業所でも参考になる取り組みがございましたら、ぜひ ご一報いただきたいと思います。

帰宅願望 帰宅願望 帰宅願望

 

Vol.16号 2016.09

化粧

 「化粧療法」なる言葉が流行り、「療法」としてのオシャレや化粧が話題になっています。 専門家によりますと、“化粧をする”ということは、その動作によりADL(日常生活動作)を維持向上することが出来、かつ、化粧をして少しでも綺麗になった自分を見ると、快感を覚えると言われます。
さて、皆様の事業所では、利用者と一緒にお買い物に行ったり、外出の際、利用者はお化粧をされていますか? 化粧は、美しくなるためにする以外に、楽しく外出するためのひとつの手段(準備)として位置付けることも出来ると言われています。 今回のケース(よいケア、悪いケア)はその点を良く表していると思います。
気候の良い季節になりました。化粧をして外出の楽しみを増やしてあげればと思います。

化粧 化粧 化粧

 

Vol.15号 2016.08

嫉妬妄想

 財布が盗まれた等の「もの盗られ妄想」は女性に多く、相手が浮気している等の「嫉妬妄想」は男性に多く見られる。室伏氏は「物盗られ妄想」は「信―不信」の世界で、「嫉妬妄想」は「所有―喪失」の軸を揺れ動いている状態であると説いている。妄想の主張の基本にあるものは、認知症によって、馴染みの風景・場・関係・自己、社会での役割・地位・労働価値等の安住の拠り所や安定した役割を失い困惑している状態にあると理解する。自らの体験からも、そのような状態にある人が、対抗“妄想”相手として、日常生活の上で一番頼りにしている人(両価感情を抱く介護者や配偶者)に向けることは納得できる。また、激しい態度で向かってくる人に対して、対抗的になったり、からかったりすると、マイナス感情はさらにエスカレートすることも解る。強い喪失体験から「妄想」状態にある人を認知症と結びつけ、安易に“抗不安薬”で沈静させると薬の副作用でかえって状態を悪くすることがある。まず、本人の行動・言動・背景を丁寧に探り、「妄想」の要因が過去や現在の生活環境にないかどうかを極め、言葉を与え、手を与え、人を与えることであろう。不安感や寂しさへの特効薬は、訴えの中から大丈夫なものを言葉に添え、相手の手に触れ、気の合った仲間と常時過ごせるように図ることであると考える。    

嫉妬妄想 嫉妬妄想 嫉妬妄想

 

Vol.14号 2016.07

物盗られ妄想

認知症の人の不可解な行動を理解し上手く対処するのに、人の行動を通して個人を理解する「行動分析学」の原理を応用する考え方(理論や仮設)がある(アメリカ心理学者スキナ―)。「行動分析学」では、個人の行動を「確立操作➡先行条件(A)➡行動(B)➡結果(C)➡」という一連の流れで示し「ABC分析」で解き明かす。尚「行動分析学」が扱う「心」は「頭の働き」を指す為、認知症の人には脳の器質性変化に当る「確立操作」にアプローチすることは出来ないが、その人の行動の原因に現状の環境要因を最重視し、「ABC」それぞれにアプローチすれば不可解な行動を解き明かすことが容易と考える。認知症になっても「意識されない記憶」や「言葉以外の行動等を伴う記憶」等は、ある程度まで保持されている為、「馴染みの環境」や「説得より納得」をケアの基本に据えたアプローチは、不可解な行動の出現を強めたり弱めたりする。「(A);財布が無いことに気づく➡;(B)通帳が盗まれたと訴える➡(C);訴えを認めてもらえる」 「(A)訴えに否定的な対応をする➡(B)泥棒呼ばわりをする➡(C)否定的な対応をしなくなる」 頻繁に変化する心理・行動には「マニュアル」的な対応より「環境」が思わぬ効果をもたらす。是非、当方に不可解な行動の対応「事例」を封書でお寄せ下さい。タッチザハートの読者の皆様にご紹介する方法を思案中です。尚、当法人HPに「出前研修」「出前相談」を掲載しています。    

物盗られ妄想 物盗られ妄想 物盗られ妄想

 

Vol.13号 2016.06

介護拒否

社会学者の天田城介氏は、他者に働きかける存在としての「認知症高齢者」と題し、【「認知症高齢者」には介護を“快く”受動的に受け入れる者もいるにはいるが、介護に非協力的な態度や抵抗をしたりして介護提供者を困惑させることも多い。「認知症高齢者」は単にケアの受け手としてのみ応じているのではなく、“積極的” に他者に働きかける存在なのである。だから、厄介であるし、だから、しんどいのである】と説いている。ある女性の激しい「入浴拒否」は、被服を脱がす段階から“何するのよ!”で始まる。それは、可愛いわが子を背に負う若き母親の命がけの闘いであった。また、ある男性の頑固な入浴拒否は、浴室の全面改装、浴槽が使い慣れた古びた木製からモダンなぶどう色の陶器に変わった時に始まった。それは、環境の大きな変化に対する恐怖からだった。「非協力的な態度」や激しい「抵抗」に対して、説得や力で相手の内的現実を修正することはできない。相手の意に沿う姿勢を示さず教え諭そうとすればするほど、相手は自分を全面的に否定されたと感じ抵抗を強める。「介護拒否」には、相手は単にケアの受け手としてのみ応じているのではなく、“積極的”に私たちに働きかける存在であると心して関わると知恵が出てくる。女性Aさんには浴室の更衣場にベビーベットを置くことで、男性Bさんには浴室に簀の子(すのこ)や桶などの馴染みのものを置くことで落ち着いた。「介護拒否」に似て、私たちも相手の意に反して、非協力的な態度や抵抗を示すことがある。また、相手から受けることがある。個別に対応せざるを得ない厄介でしんどい「介護拒否」から学ぶことが沢山ある。   

介護拒否 介護拒否 介護拒否

 

Vol.12号 2016.05

生活型リハビリテーション

高齢者介護の施設や事業所の多くは「本人が持つ力の活用・本人主体の暮らし・生活の継続性」を目標に、多種多様な○○療法(セラピー)に取り組んでいる。そんなある日、GHの居間で聴いたAさんBさんと介護職員の話。

「退屈やなぁ-」
「モウスグ○○療法がハジマリマスヨ」
「いや、もうええわぁ」
「ドウシテ?」
「・・・何か他にないかなぁ-」
真実は“眼聴耳視”で解ると言われている。AさんBさんの口調や表情からも退屈であることが解る。AさんBさんの訴えにも近い話はさらにつづく。
「退屈やなぁ-」
「こんなことをしていられへんわ」
「ジャア、ナニガシタイデスカ?」
「?・・」
彼女彼等は決して無気力な人ではない。“気力が体裁をつくるのではなく、体裁が気力をつくる”と誰かが言った。そのとおりだなと思う。炊事に明け暮れた人は、エプロン姿になると台所に立たれる。畑や庭いじりをしてきた人は、野良着姿になると釜や鍬を上手に使い農作業をされる。いずれも手慣れた手つきで仕草が美しい。【人生の質】の人生とは何だろう。最近、納得できる一言に出会えた。【今日という日は残された日々の最後の一日】介護の施設や事業所は、高齢者の世話をしながら【共に生きている】とはどうゆうことかを感じ合い、身を持って実感できる場であると思う。

出野平恵

生活型リハビリテーション 生活型リハビリテーション 生活型リハビリテーション

 

号外 2016.05

京都新聞・「福祉のページ」より・・・

拝啓 新緑の候、貴事業所におかれましては益々ご清栄のこととお慶び申し上げます。日頃は、当協会に何かとご協力いただきありがとうございます。

さて、新年度を迎えまして、皆様の事業所にも多くの新しい職員さんが入社され、基礎研修を終了後、グループホームの介護現場で活躍されていることと思います。

昨年10月、京都新聞朝刊「福祉のページ」に、当協議会理事長のグループホームに関する記事が掲載されました。グループホームのあり方がわかり易く説明されていますので、新入職員さんや、グループホームの職場が初めての職員さん達にお配りし、参考資料としてご活用いただけたらと思います。

今後も「タッチ・ザ・ハート通信」は定期的にお送りしますので、宜しくお願い致します。 敬具

京都新聞掲載

 

Vol.11号 2016.04

意欲の低下 (自発性の低下)

外出しなくなった、趣味を楽しまなくなった、本や新聞を読まなくなった等の「意欲の低下」は、周囲の人には「いつもぼんやりしている」「何もやる気がない」と映ります。アルツハイマー型認知症の初期に最も頻繁に見られる症状で、脳の前頭前皮質が司る作動記憶(ワーキング・メモリー)の機能低下により、感覚器官から入った外界の情報を過去の記憶と照らし合わせたり、その情報をふるい分けたりする等の情報処理が上手くできなくなるからだと言われています。そこで、「意欲の低下」に対して、上手く取り組めないことを何度も経験すると、その度に出来ない自分を認識し、自分の存在感や自尊心をも失います。

その結果、作動記憶の機能や認知機能はますます衰えていきます。そのまま放っておくのも結果は同じです。音楽・家庭菜園・散歩等のような、作動機能をあまり使わなくても「感動」「驚き」を味わうことが出来るものや、「昔取った杵柄」の中でも楽しめることには自発的に取り組んで頂けると思います。

"万事を大真面目に受け止めずに、ただ感覚だけを現実に「確かなもの」と捉える。生命を精一杯生きることに専念し、満たされた気持ちの中に安らぎを見出せるように、「感動」「驚き」といった自分に秘められている能力をせめて無駄遣いしないように心掛けたいものです。 人生で大切なことは雨が教えてくれた  ドミニック・ローホ 原秋子訳"  

意欲の低下 (自発性の低下) 意欲の低下 (自発性の低下) 意欲の低下 (自発性の低下)

 

Vol.10号 2016.03

「施設内での行事や催し」

「生」と言う字は「芽のはえ出たさま+土」、「枯」と言う字は「木+古」なのだそうです。3月の山では、からからに乾いた枯れ木に沢山の冬芽がついています。また、地面では、あたたかい日の光や地のぬくもりで、湿った枯れ葉の衣を破って草が萌えはじめています。「1月いぬ・2月逃げる・3月去る」のことわざがありますが、施設も1月~3月は行事や催し(お正月・節分・お雛祭り等々)の目白押しで何かとお忙しい季節であったかと思います。季節行事や催しは、衰えた機能に適応した暮らし方をしているお年寄りの方にとっては、過去に体得された記憶から役割や出番が多くあり、楽しかった出来事(個人史)の自発的な回想につながり、「五感/感覚」が活用できる良い機会となります。季節行事や催しの取組みを通じて、お年寄りの方の「自律/自分で決めたことを自分の思う様にできる」といった自己効力感を強め、「今日・今を生きる」を支えることが出来れば、私たちにとっても、季節行事や催しが味わい深いものとなるでしょう。

施設内での行事や催し 施設内での行事や催し 施設内での行事や催し

 

Vol.9号 2016.02

「暴力」

 “If you're going to lead, lead”
=「もしあなたがリーダーなら、リードせよ」
”“So what? Now what? What are we going to do about it?” 
=「それが何? で、どうする?」
“If nobody told you they loved you today, you remember I do, and I always will.”
=「誰からも愛されていないと言ったわね。私はいつもあなたを愛していることを思い出して」

NHK「スーパープレゼンテーション」(2/10放送)でのリンダ・クライアット・ウェイマンのプレゼンテーションのキーワードである。彼女はアメリカ全土から注目を集めている特別支援教育専門の教師であり、貧困と暴力につぶされた生徒達の心を短期間で変え、成績を急上昇させた高校の校長である。「高校生」と「認知症を持つ人」が違うわけがない。同じ人間である。人間誰も苦しみが存在し、苦しみには原因がある。
- 私は全ての問題にこう問いかける。「だから何? で、どうする?」- 
彼女の説かれた言葉を語り伝えたい。

出野

暴力 暴力 暴力

 

Vol.8号 2016.01

コミュニケーション

 私たちはあれこれ一人で思い悩み、答えがどうしても出ないとき、その思い(愁い煩い)を少しでもだれか身近な人に解ってほしいと思う。じっくりと聴いてくれて、「うんうん」とうなずき、「そうね」と相づちを打ってもらいたいと願う。「共感」とか「同情」と言ったサポートである。しかし、私たちが心底から誰かに解って欲しいと願う時とは、鬱の時であり自分でも何を訴えたいのかよくわからない時であろう。そのような場合は、直接かかわらないで、ただじっと見守っている、何もしないで横にいるといった何もしないという行為が何よりも嬉しい。いつも誰かに関心をもたれている、見守られているといった感覚、理解してもらわなくとも、聴いてもらえたといった感覚、私の思い(愁い煩い)が「理解してもらえた」ではなく、「納得してもらえた」というあの感覚である。認知症ケアの現場で、相手の心は解らないが、その場その場でその人の憂いや心配事を引き受ける時に味わう感覚である。生きていくということは外界と交わる、外界から関心を持たれるということであり、私たちが外界を見ようとしなくなり、関わらなくなり、考えなくなるということは、生きていくことを危うくさせる。

阪神大震災から早いもので21年が経過した。【1・17】も年々歳を重ねている。震災に遭遇された人々の苦難・体験に心を向け、関わり、学ぶことを忘れてはいけない。(黙祷)

コミュニケーション コミュニケーション コミュニケーション

 

Vol.7号 2015.12

夜間せん妄

冬場は原因がいっぱい!せん妄  

一見、認知症の症状が悪化したかのように見える“せん妄”状態。原因に感染症・発熱・脱水症・薬の副作用等があげられる。インフルエンザやノロウィルス、肺炎等の感染症が流行する冬は、抗ウィルス薬や抗生物質を服用する機会が多い。インフルエンザ治療薬による薬剤性せん妄は有名である。また、鼻炎薬・咳止め薬も原因となることがある。風邪に処方された薬を服用後、数時間~数日の間にせん妄に気付いたら、まず薬の影響を疑おう。さらに、冬場、高齢者は水分をひかえる傾向があり、部屋の乾燥や発熱による脱水症で血圧低下、血中ミネラルの異常からせん妄を起こすことがある。また、高血圧や心臓疾患で服用している利尿剤は尿量を増やし体液量を減らすことが目的なので、効きすぎると脱水を起こす。せん妄は、早期に原因を取り除けば回復するが、放置すると命にかかわることもある。せん妄状態であることに早く気づき、原因を探ることが重要である。

夜間せん妄 夜間せん妄 夜間せん妄

 

Vol.6号 2015.11

身だしなみ

  「人はみな、自分の人生を生きている」は、詩人寺山修二さんのことば。「美しいものに囲まれていれば、人は自然に美しくなれる」は、美和明宏さんのことば。私が着ている服は、他でもない私自身が選んだ服。髪型だってそう。 身だしなみは、社会を意識した人間の基本行為の一つである。生きていく為に必要なエネルギーを生み出してくれる。丁寧な言葉遣い、美しい音楽や絵画等に囲まれた暮らしは、私を自然に美しくしてくれる。歳を重ねると多くの事をあきらめねばならない。手足の自由が奪われ、記憶力や思い出も薄れる。親しい友人との別れも多くなり、昔ながらの装いを保ち続けることが難しくなる。そんな現実を前に、生活の隅々に“美”の意識を張りめぐらせる努力は大事である。おしゃれ心が身だしなみのレベルを決める。施設で見かけるお年寄りの髪型(ショ-トカット)、入れ歯の扱い、ナイロン前掛け、職員の制服…など、皆一様であり、観点を変えると決して美しいとは言えない。いくつになってもおしゃれや身だしなみは失いたくない。60には60の青春、80には80の青春がある。

認知症のある人とその周辺の人たちが、皆、美しいものに囲まれ、エレガンスでロマンチックな気分となります様に。

身だしなみ 身だしなみ 身だしなみ

 

Vol.5号 2015.10

モーニングケア

 今日は雲ひとつ無い晴天。「気持ち良いめざめ」の後に排泄、モーニングケア(洗面・歯磨き)。朝食後に再び歯磨き・排泄をすませ、からだとこころを「すっきり」させて家を出た。午前5時に起き、わが家を出るまでのいつもの私のセルフケア(動作)である。  朝は規則正しい生活の一歩であり、一日の内で一番くつろげる時間である。

今日の外出はいつもと違う特別な日。9時過ぎから西京極陸上競技場で「京都市小学生陸上競技持久走記録会」100m走に孫が出場し、観覧席から声援を送った。成績は17秒8であった。彼はやり切った満足感「心地よい感じ」を私に笑顔で届けた。私も「良かったね!頑張ったね!」と笑顔で返した。 自分の存在感や現実感が心もとない人には、とりわけ、朝が規則正しいその日の一歩であるようにしたい。お年寄りのバイタル、起き上がり・立ち上がり・歩く等の状態、前夜服用の薬の副作用、覚醒レベル等の状態を知ることから始め、朝の一連の動作(起き上がり、立ち上がり、トイレで排泄、モーニングケア、食事等)に、ひとり一人の「今・ここ」を大切に付き合う。お年寄り自らが主体的に一つ一つの動作に向かうことを支える。

他者との協調、他者に対する信頼感が育まれ、認知する世界のズレによるストレスを縮めることが出来る。何よりも動作一つひとつの達成感が“生き抜く”力となる。それらは、孫と私がともに味わった満足感「心地よい感じ」であり、双方向に働く。

 

<お誘いです・・・・・・>  

添付11月21日(土)の研修会案内は、去る10月8日に“みやこめっせ” で開催した「全国フォーラムin京都」に次いで、京都府認知症グループホーム協議会が独自で開催する恒例の研修会です。講師は、厚労省老健局・介護保険指導室長を歴任され、現在、当協議会顧問であり、一般社団シルバーサービス振興会常任理事としてご活躍の中井孝之氏です。最近の好ましくない介護事情を察して、介護保険そのものの存続が危ぶまれています。この研修で、最新の認知症施策と介護保険制度の動向を知り、認知症ケアの最先端に居る私たち自らが、新たな気持ちで仲間とともに考える機会となることを望んでいます。事業主の皆様へもお伝え下さいます様併せてお願い致します。

モーニングケア モーニングケア モーニングケア

 

Vol.4号 2015.9

睡眠

「眠って欲しいのに眠ってくれない」「昼夜逆転が治らない」は介護者の悩みの種。良い対処法は不眠の正体を探り試行錯誤するしかない。毎晩の事であり、私たち自身も上手く調整するのは難しい。不眠に悩む高齢者に21時の定時消灯は辛いことであろう。若者と違って高齢者には「早寝」より「遅寝」をお勧めする。人間が眠るのは、高次脳機能を司る大脳皮質に休息をもたらす為であり、「脳の疲れ」が大切とのこと。脳の働きが脆弱な人には、過度な音や光等の刺激や過緊張は避けたい。

他方で五感を働かせた日中の活動は覚醒度を上げ、大脳皮質の高次脳機能を活発にさせる。脳の休息が要求され、不眠への対応策となる。外気との関係もある。昼間の冷房は自然の理に反する為、良眠を妨げる。眠る前は暖かい環境にあるのが良く、暖かい飲み物、足浴、介護者の穏やかな声や表情は効果がある。「レム睡眠行動障害」等は、専門医の診断を仰ぐ一方で、睡眠薬が症状を悪化させることを認識することが大切である。

脳は身体の一部であり、様々な物理的な刺激が脳機能に影響を与えている。ナイチンゲールの「看護覚え書」が参考になる。

睡眠 睡眠 睡眠

 

Vol.3号 2015.8

排泄

前号のからだに入れる“食事”の話につづき、からだから出る大小の排泄物“排泄”の話をします。

“排泄”は“食事”と同じく大切な生物の営みであり、生命維持に欠かせません。排泄が自分一人の力(意思)で叶わない時には、赤ちゃんもお年寄りも関係なく、他者からの働きかけ(ケア)が必要となります。特に認知症のある人の排泄ケアに際しては、失敗の原因を全て“認知症”のせいにしないことです。原因は複雑で病状の進行によっても変化していきます。排泄ケアは失禁という障害の要因を的確に捉えた上で、本人に気づかれない様に先手を打つことが最も適しているでしょう。ナイチンゲールは著書「看護覚え書」で、看護とは生活過程「暮らしの営み」を通して生命体に働きかけることであり、看護実践は「観察」に始まり「観察」に終わると説いています。介護も同じです。豊かな常識と人の“生きる”に対する関心があれば「観察」により的確な排泄ケアが出来るでしょう。私達は排泄を「健康のバロメーター」として理解しています。

健康で「当たり前の生活」に近づける最大のポイントは、排泄行為を出来るだけトイレで座って行うこと、「観察」によってそのタイミングを逃さないことと言えるでしょう。 さて、今回は排泄に関し、「よいケア」と「悪いケア」の紹介を致します。

排泄 排泄

 

Vol.2号 2015.7

食事

私たちは、炭水化物や脂質・蛋白質・ビタミン・ミネラル等の栄養素を含む“食べ物”を毎日繰り返し“食べること”で身体を作り生命を支えています。また、食前食後に「いただきます」「ごちそうさま」と手を合わせ、“食べ物”を私たちの命に大切なものとして感謝しています。人は長い歴史の中で、自然の中にあるものをそのままではなく、焼く・煮る・蒸す・揚げる・発酵させる等に加工することで“食べ物”の味や栄養等の価値を高めて来ています。また、人間は誰もが無力のままで生まれ、乳を最初の“食べ物”としてもらい、生後4か月頃から始まる“離乳食”、幼少年期から青年期までの保護者が与えられる“食べ物”のみを食べ続けます。その人の味の好みに大きく影響を与えている“おふくろの味”はその間に刷り込まれたものとのことです。

認知症のある人に対して、“食べること”は、臭覚・運動感覚・触覚・視覚・聴覚・味覚の五感を刺激し、加齢と障害によって落ち入り易い感覚遮断を補うことに役立っています。他にも、食事環境の理解を改善し、やりなれた機能的な動作を促します。覚醒レベルを上げ、社会的に適切でその場にあった言葉のやりとりを可能にし、見当識の再確認の為の情報を与えることが出来ます。楽しい感覚を経験し、感情表現とコミュニケーションの機会を生み、自己尊厳を高めます。また、脳には「言葉に拠らないノンバーバルなコミュニケーションを実現するしくみ」があると言われ、美味しい・楽しい・懐かしい等をその場を共にする人たちと共有すれば、“食べること”には、個食・孤食・コ食(テレビを見ながら)では得られない幸福感を得ることが出来るでしょう。

認知症対応型生活介護「グループホーム」では、朝・昼・夕・間の“食べること”に多くの時間を割いています。朝刊の折り込みチラシから献立をし、食材を求めてスーパーに出かけ、調理・盛り付け、後片付けまでを、職員等といっしょに・ゆっくり・たのしく行います。女性の方にとっては、“食べること”の一連の作業は、長年にわたり行い続けてきたことであり、断片的ではありますが、手慣れた馴染みのこととして職員に教えている姿が見受けられます。

さて、今回は食事に関し、「よいケア」と「悪いケア」の紹介を致します。

食事 食事 食事

 

Vol.1号 2015.6

創刊 理事長からのご挨拶

例年であれば過ごしやすい春の季節が、今年は、暑くなったり、冷え込んだりで、ほのぼのとした春らしい天候は少なかった様に感じます。皆様は如何でしたでしょうか。そしてこの通信(『タッチ・ザ・ハート通信』Vol. 1号)が皆様方の所に届くころは、既に日本列島梅雨の真っただ中の頃と存じます。

さて、日頃は、多方面に亘り当協議会にご指導ご協力を賜りまして誠に有難うございます。お陰様で当協議会は2005年に法人格を得、今年で10年目を迎えました。これもひとえに会員の皆様方をはじめ、同じ事業をなされておられます事業所様のご尽力のお陰であると深謝致しております。

つきましては、法人化10年目を迎えた節目といたしまして、今後、当協議会から皆様方に、認知症ケアを中心とした様々な情報をFAXでご提供させていただくことに致しました。 今回の介護報酬改定を受けて、多くの事業所様はその対応に苦慮されておられることと存じます。協議会がこの通信を介して事業所様の事業の質の向上に少しでもお役立ちできれば幸いと存じます。

今日、認知症ケアという言葉は広く社会に浸透してきています。この「ケア」という言葉及びコンセプトを、私は人と人との間の関係のあり方という意味に理解しています。これから、この『タッチ・ザ・ハート通信』でご紹介する内容の中には、2000年12月に仲間と共同で著作したものもあり、今の介護現場では極々当たり前のこととして捉えられ実践されているものばかりです。しかし、この当たり前のこと、ふつうのことが実際には難しい現状にあることに憂いを示す人達がいます。私もそのひとりです。何が、このあたりまえのこと、ふつうのことを難しくしているのでしょう。それは日々提供されている「ケア」が、本質は【相互補完性】であるという命題に至らず、制度の進化とともに、専門的(専門家)による枠組みの強化、関係がケアをする人とされる人になっているからでないでしょうか。「認知症ケア」を決定づけるものは、“私は認知症になったけれども、あなたと同じ人間ですよ”という認知症の状態にある人の声なき声を同じ人間として受け止める【感性】であると思います。人生は人との出会い・本との出会い・場所との出会い・物と出会い等、実に様々な出会いがあります。認知症ケアの現場には「感性こそ生きる命の本質である」ことを実感できる人との出会いがあると確信しています。

理事長 出野 平恵

京都府認知症グループホーム協議会